
うちのネコちゃんは若いし、お口の病気はまだまだ大丈夫かな、と思われている飼い主さんはたくさんいらっしゃいます。
しかし、4歳以上の50~90%のネコちゃんはお口の中に病気を抱えているという報告があり、2歳ごろから発症し始めるネコちゃんも少なくありません。
このようなお口の病気は早期に対処することで進行を軽減することが可能なこともあります。
では、どんなお口の中の病気がネコちゃんに起こるのでしょうか?
【歯肉炎】
ネコちゃんに最も多くみられるお口の中の病気は歯肉炎です。
歯肉炎は歯の根元の歯肉が赤くなり、腫れたり痛くなることがあります。
では、どうして歯肉炎が起きてしまうのでしょうか?
ご飯を食べた後、歯の表面に食べかすが残り、唾液やお口の中に常在する細菌が混ざり合い歯垢(プラーク)を形成します。このプラークを常にきれいにしないと、唾液などに含まれるミネラルが付着し、硬い歯石が作られてしまいます。
そして歯石が歯の根元の歯肉の奥まで達すると、歯肉の炎症、歯肉炎が起こります。
軽度の歯肉炎では痛みを伴わないため、歯肉炎を発症していることに気づかれない飼い主さんがたくさんいらっしゃいます。
予防注射や定期的な健康診断などで動物病院を訪れた際に歯肉炎がありますねと言われることが多いのではないでしょうか?
【歯周病】
歯肉炎がさらに進行すると、歯の根元の歯肉の奥まで影響が及び、歯周病を起こしてしまいます。
歯周病になると、歯肉が腫れ、痛みを伴うようになり、重症化すると歯はぐらつき、歯が抜けてしまうこともあります。
そして、ご飯を食べるとき、もしくは食べた後に口を気にするようなしぐさを見せることがあります。また、食欲の低下やよだれを垂らす症状を伴うこともあります。
ある程度まで歯周病が重症化してしまった場合には、通常、悪い歯を抜歯することが根本的な治療となるのですが、ネコちゃんの抜歯は全身麻酔下で行わなくてはなりません。
中高齢になり、腎臓や肝臓などの機能が低下したり、心臓病など何らかの病気を患っているネコちゃんでは、全身麻酔を行うことが難しい場合があります。そうなると、抗生物質や痛み止めなどを使って一時的にお口の痛みを緩和するなど、実施可能な治療法は限られてしまいます。
このような事態を予防もしくは遅延させるためにも、若いうちからお口のケアはとても大切です。
【歯磨き】
ネコちゃんに歯ブラシを使った歯磨きを毎日行うのは至難の業です。
まずはガーゼを指先に巻いた簡易的な歯磨き法を試してみるのもよいかもしれません。
いきなりお口の中を触られると嫌がるネコちゃんはたくさんます。そのため、まずはお顔のマッサージから始めてみましょう。初めの1週間はネコちゃんのお口の中は触れず、お顔だけのマッサージを行います。
ネコちゃんが受け入れてくれるようであれば、マッサージ中に歯茎を一瞬だけ触る練習をします。歯茎に触れても嫌がらないようであれば、徐々に長め(はじめは数秒から)に触る練習をします。
歯茎に触れるようになったら、1本の指先に乾いたガーゼを巻き、お顔のマッサージをしながらガーゼで歯を優しくふき取る練習をしましょう。
ネコちゃんの歯磨きでは長い時間しっかり磨くことは難しいのですが、歯の表面に張り付いた歯石になる前のプラークやバイオフィルムをふき取るだけでも歯周病の進行を防止する効果は期待できます。(一度歯石が形成されてしまうと、歯磨きできれいにすることはできません。歯石を除去するためには、全身麻酔下でのスケーリングという処置が必要になります。)
【歯磨き以外の方法】
歯磨きはどうしても無理、という場合には、お口の中の歯周病菌をコントロールするサプリメントなどもあります。
ネコちゃんの歯肉の状態に適した、また、ネコちゃんの性格に合ったお口のケア法について、ぜひ、かかりつけの動物病院で相談してみるとよいと思います。
最後に
たくさんのネコちゃんが口の痛みのために動物病院を訪れています。まだまだ大丈夫と過信せず、早めのマウスケアをスタートしましょう!
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