
風邪とは、鼻やのどの上気道から入り込んだ病原体(ウィルスや細菌など)が感染し、鼻やのど、お腹などに急性炎症を起こす病気です。人に風邪を引き起こす原因のおよそ8~9割はウィルス、それ以外は200種以上ものさまざまな細菌が関与していると考えられています。
このような人の風邪はワンちゃんにうつるのでしょうか?
答えはほぼNoです。
ウィルスや細菌などの病原体には宿主特異性という性質があり、各病原体は対象となる特定の動物種もしくは人にしか感染しません。ただ、非常に稀ではありますが、対象となる動物種以外に感染することもあるため、ほぼNoという答えになりました。
では、ワンちゃんも風邪をひくのでしょうか?
答えはYesです。
ワンちゃんに比較的よくみられる風邪のうち、ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)は1歳未満の若いワンちゃんに発症しやすい病気です。感染したワンちゃんからの飛沫感染や接触感染により広がっていくため、保護施設やペットショップなど、たくさんのワンちゃんが暮らす環境からきた子犬にみられることが多く、そのほかにも、多数のワンちゃんと接する機会の多い場所に訪れることにより感染することがあります。
【ケンネルコフの原因となる病原体】
犬パラインフルエンザウィルスや犬アデノウィルス2型、ボルデテラという細菌、犬呼吸器コロナウィルス、犬ヘルペスウィルスなどさまざまです。
【ケンネルコフの症状】
主に咳がみられ、ワンちゃんによっては鼻水やくしゃみ、発熱を伴うこともあります。子犬や免疫力が低下したワンちゃんでは、悪化して肺炎を起こすこともあります。なお、ケンネルコフが人にうつることはほぼありません。
ケンネルコフのうち、犬パラインフルエンザウィルスと犬アデノウィルス2型に関しては、混合ワクチンに含まれていることがあります。動物病院では通常数種類のワクチンを用意しているので、普段から他のワンちゃんとの接触が多い生活環境の場合には、その旨を動物病院で相談してみるとよいでしょう。
また、風邪以外にも、ワンちゃんに咳やくしゃみ、発熱などを引き起こす病気はあります。
そのため、咳や鼻水、くしゃみが続く場合には、元気や食欲があっても早めの受診をおすすめします。その際には、最後に接種したワクチンの種類と時期、咳がどのくらいの期間続いているか、咳が始まる前の1週間前後に他のワンちゃんと接触する機会があったか、もしくはワンちゃんがたくさんいる場所を訪れたかを知らせることも重要です。また、感染を拡大させないためにも、診察を受けるまでは、他のワンちゃんとの接触にはくれぐれも注意しましょう。
